あくまで法律のはなし

なぜか福岡で働くことになった弁護士が、なぜか福岡で独立しなければならなくなったブログ

判決か和解か

 先日、金銭を請求する訴訟で、原告側の代理人をやったのですが、被告の和解案を蹴って判決を貰ったんです。結果は、こちらの勝訴判決でした。

 被告は、これまで徹底的に争っており、1円も払わない姿勢だったので、判決で勝っても、支払わない可能性があったのですが、驚いたことに、判決後、一括で払いたいという連絡をしてきました。原告も「いままでの被告の態度はなんだったんだ」と拍子抜けした様子です。

 こちらも相応に譲歩した和解案を伝えていたのですが、結局、当方の和解案を上回る判決となり、被告は、いまごろ、和解に応じておけば良かったと思っているかもしれません。

 しかし、もしかすると、被告は、最初から、支払いを覚悟しており、勝てればラッキーという投機的な意図で争っていたのかもしれませんね。

 

 さて、判決か和解かは、依頼者にとって難しい決断の一つですが、弁護士としては、メリット・デメリットを説明して、原則として、依頼者に判断を委ねます。

 和解のメリットは、任意の履行が期待できること、金銭以外の合意もできること、控訴される可能性がないこと等で、デメリットは、通常、判決よりも譲歩した内容になること(でなければ相手方が和解に応じるはずがない)です。

 依頼者のなかには、「先生の判断に任せます」とか「先生ならどちらにしますか」と言われる方がいますが、こういう質問をされると、多くの場合、「和解」という判断に傾きます。もちろん、1000万円を請求しているのに10万円で和解するとか、訴訟をした意味がないような和解には応じられません。しかし、そのような極端な場合でない限り、弁護士に判断を投げられると、「和解」という結論になることが多いのです。

 

 判決と和解で決定的に違うのは、和解は「解決」だけど、判決は「解決」とは限らないということです。判決を得ても、控訴される可能性がありますし、相手方が判決に従わないかもしれません。金銭を請求する場合、相手が従わなければ、相手の財産を探し出して、強制執行するというハードルが待っています。

 もちろん、和解であっても、和解内容を無視する人はいますが、少なくとも、控訴されることはないですし、裁判上の和解には確定判決と同一の効果があるので、強制執行も可能です。

 したがって、依頼者から判断を任された場合、和解の方に傾きがちになるわけです。 

 

 判決と和解のどちらが良いかは、ケースバイケースで、一概には言えませんし、選択に迷うのは、弁護士も同じです。仮に、強制執行などで、判決通りの内容を実現できたとしても、それまでに手間と時間がかかりますので、それを「良い結果」と評価するかは人それぞれだと思います。しかし、相手が判決に従わない可能性が高いからといって、安易に和解に応じたのでは、依頼者としても、納得ができないことが多いでしょう。判決で勝ったら、(時間と手間に納得していただけるなら)それを実現するのも、弁護士の仕事です。ただし、控訴リスクや執行不能リスクを負うのは、最終的には依頼者ですから、事前にしっかりリスク説明をします。

 今回は、それでも判決を得るという決断を自己責任でしっかりできる人だったので、こちらとしても気が楽でしたが、もし、優柔不断に悩んだり、決断を後悔する人だったら、和解するように誘導していたかもしれません。

 弁護士は、専門家ではありますが、あくまで依頼者の「代理人」です。

 そこを正確に理解して重要な決断をしてくれる人だと、弁護士としては仕事がやりやすいですね。