あくまで法律のはなし

なぜか福岡で働くことになった弁護士が、なぜか福岡で独立しなければならなくなったブログ

有料法律相談のススメ

 現代では、インターネットの普及により、あらゆる情報が無料で手に入るようになりました。法律相談にも、無料化の波が押し寄せており、無料相談を望む依頼者の方は多いなあと感じています。市役所等では、住民サービスとして無料法律相談が行われていますし、街の法律事務所でも、無料の事務所が増えています。しかし、私が無料相談を担当した経験から言えば、有料の法律相談の方がおススメです。それには、ちゃんとした理由があって、決して無料で仕事をするのが嫌だからではありません。

無料なのはボランティアか営業だから

 弁護士は、法律の知識を売って、収入を得る職業です。それが、無料で法律相談をするとしたら、「ボランティア」か「営業」のどちらかしかありません。

 市役所等の法律相談は、弁護士会を通じて順番に配転され、義務化されている地域もあります。もちろん、この法律相談を通じて仕事に繋がることもあるのですが、数か月に1回程度しか担当が回ってこないので、事務所経営の柱にはなりません。したがって、弁護士の意識としては、原則、ボランティアなのです。

 他方、無料法律相談を実施している法律事務所もありますが、これは営業活動です。法律相談自体はお金にならないので、無料を餌にして広く集客し、その後の依頼につなげるのが目的ということになります。

 私は、ボランティア的無料相談も、営業的無料相談も、弁護士として経験していますが、どちらにもデメリットがあると感じています。たとえば、親族や知人が法律相談を検討していたら、無料相談を勧めることはありません。

ボランティアの場合

 通常、市役所等で行われている無料法律相談は、20分~30分程度の時間制限があります。そんな短い時間では、ほとんどの場合、十分な法律相談はできません。おおよその事情を聴取した結果、法律で解決できない問題であれば、そのようにご説明して、綺麗に終了できますが、法律的に解決しなければならない問題であれば、それを素人の相談者に説明して理解させるのは不可能な時間です。また、その場で弁護士に依頼することもできません。そもそも、その場で受任すること自体が禁止されていることもありますし、相談者側としても、20分~30分の相談で、すぐその弁護士に依頼することを決められるわけがありません。弁護士に依頼するには、後日、担当弁護士の事務所まで行って継続相談をする必要があります。しかし、これでは二度手間になってしまいますし、そんなことなら、最初から自分で法律事務所を選んだほうが早くないでしょうか?

 20分~30分の無料法律相談で足りる場合というのは、法律相談の結果、「弁護士に相談しても仕方がない」と確認できた場合くらいです。要は、市役所等の無料相談は、弁護士に相談すべき事柄かどうかをスクリーニングする程度しか期待できないということです。弁護士に十分なアドバイスを受けたい場合や、弁護士に依頼したい場合は、市役所等の無料相談は適していないので、直接、法律事務所を探した方が良いでしょう。

営業活動の場合

 営業的観点から、法律相談を無料にしている事務所はどうでしょうか。弁護士側は依頼に繋げることが目的なので、最初から依頼するつもりで弁護士を探している人にとっては、良いかもしれません。

 ただ、こういった法律相談では、弁護士のアドバイスが営業トークに偏りがちになるので、正確な見通しを立てるのが難しい場合もあります。また、依頼に結びつかない法律相談と分かったら、弁護士が熱心に相談に回答してくれない可能性もあります。もちろん、有料の法律相談といえども、営業的側面はありまし、無料の法律相談でも、客観的で熱心な回答をしてくれる弁護士もいます。しかし、有料相談と無料相談では、やはり、弁護士の意識は違ってくることは避けられません。

 弁護士の法律相談というのは、「法律上、絶対に○○だ。」と断定できるものは少なく、いろいろな可能性を予測して、方針を立てるという性質のものですから、営業トークが混じるのと、そうでないのとでは、相談者の受ける印象は全然違ってくるでしょう。もしかすると、必要以上に不安を煽ってくるかもしれません。無料なので、お金は払わなくてよいかもしれませんが、せっかく時間を割いて弁護士事務所まで行ったのに、そんな営業トーク混じりの話なんて聞きたいですか?また、そんな営業熱心な弁護士に依頼したいですか?

 

 弁護士の法律相談は、一般的に30分5000円くらいです。個人的には、無料相談は時間の無駄になることが多いので、最初から有料相談を選ぶほうがお勧めです。

 日本人は、普段から、弁護士を利用してトラブルを解決する習慣がなく、法律問題に対処することに慣れていません。「弁護士に相談したほうが良いかも」と思った時点で、それなりに深刻な問題に直面している可能性があります。

 30分5000円くらいは払っておいたほうが、無料相談のデメリットを考えると、かえって得だと思っています。