弁護士の選び方

 弁護士の選び方を考察するサイトが存在します。依頼者が経験談を書いたブログなどもありますが、現役の弁護士目線で書かれたものもあります。

 しかし、どのサイトをみても、決定的に有効な方法は存在しないことが分かります。身も蓋もないことを言ってしまえば、弁護士は専門職なので、その技量を素人が計測することなどできないということでしょう。

 そもそも、訴訟というのは勝ち負けのある世界なので、結果だけ見て、優秀とか無能とかいうのは筋違いです。マイナス100の状態からマイナス90にリカバーするのが限界のこともありますし、場合によっては、マイナス100から更にマイナス120まで悪化するのを防いだというだけで、優秀な弁護士のこともあります。しかし、素人の方には、結果以外を評価する能力がありません。マイナス100で済んだのが弁護士の実力のおかげだと評価する能力はないのです。

 したがって、弁護士を選ぶ場合には、その力量を推し量るのは無理であるという前提から考えなければなりません。そうすると、あとは確率の問題になりますので、できるだけ良い弁護士を引き当てるためにはどうすれば良いかを考えていきます。

 

学歴で選べ!

 東大や京大を出ているからといって、優秀な弁護士とは限らないと言われることがあります。私もその意見には大賛成です。しかし、弁護士の力量は素人には分からないのですから、なにかしらのシグナルで判断するしかありませんし、この記事の目的は、良い弁護士を引き当てる確率を上げる方法です。そうなると、学歴で選ぶのは一つの選択肢と言わざるをえません。偏差値の高い大学を出ている弁護士は、学力が高いはずなので、弁護士としても優秀かもしれないのです。

 もっとも、私なら、弁護士を学歴では選びません。高学歴弁護士が優秀というわけではないということを知っていますし、素人ではないので、選ぶ目を持っているからです。

 

成績で選べ!

 司法試験の成績や、司法修習の成績を開示している弁護士もいます。たしかに、試験の成績など、所詮その時におけるペーパー試験の処理能力を示しているだけであって、現在の弁護士としての実力とは関係ないかもしれません。しかし、大学名などの学歴に比べると、司法試験等の成績は、法律試験の成績ですから、より法律家としての実力を反映している可能性が高いかもしれません。

 もっとも、私なら、弁護士を成績では選びません。司法試験や司法修習の成績など、過去の話ですし、そんなの弁護士の実力とは全然関係ありませんから。

 

経験年数で選べ!

 弁護士歴が長いからといって、優秀な弁護士とは限らないと言われることがあります。たしかに、昔の弁護士は殿様商売だったので、依頼者に対して横柄かもしれませんし、最新の法改正や判例をフォローしていないこともあります。しかし、経験の長い弁護士は、いろいろな事件を経験しているはずなので、あなたの事件についても、良い解決をしてくれるかもしれないのです。

  もっとも、私なら、新人とベテランは避けます。新人は経験値の問題として、ベテランは、機動力やコミュニケーションの問題(自分の年齢から遠いとコミュニケーションが取りづらい)として、避けたいと思うでしょう。経験値については、5年以上経験があれば、それ以上は気にならないと思います。

 

役職で選べ!

 弁護士会の会長経験とか、副会長経験とか、交通事故委員会所属とか、労働委員会所属とか、そういった肩書で選ぶのは無意味だという意見があります。

 たしかに、地方の小規模弁護士会だと、会長とか副会長は、実質的には持ち回りで担当しており、弁護士としての実力で勝ち取るような地位ではありません。収入が減るので誰もやりたがらない仕事だったりします。しかし、人格や能力にむちゃくちゃ問題のある人物は、そういった役職からは排除されている可能性もあるので、そういう人物を避けるためには、肩書で選ぶのも良いでしょう。

 また、弁護士会の委員会というのは、希望すれば誰でも所属することができますし、所属しているだけで出席していない幽霊会員も多いので、たとえば交通事故委員会に入っているからといって、交通事故に詳しいわけではありません。しかし、そうだとしても、確率の話でいえば、交通事故委員会に入っている弁護士の方が、交通事故に関心がある確率が高いのではないでしょうか。自分の事件に詳しい弁護士に当たる可能性を高めるには、一つの方法だと思います。

 言うまでもありませんが、私が選ぶなら、弁護士会の役職なんか無視します。そんなもの弁護士としての実力とは全然関係ありません。

 

大きい事務所を選べ!

 人数が多いからといって、弁護士としての実力があるわけではないと言われることがあります。しかし、人数が多ければ、分からないことがあっても、他の弁護士に相談できますので、一人で事件を担当するよりも、適切な弁護活動になる可能性が高いと思います。また、チームで仕事をするには、独善的で協調性のない人柄では困りますので、大きな事務所に所属している弁護士は、依頼者に対しても、丁寧に対応できる人の可能性が高いでしょう。

 また、昨今、弁護士による預り金の横領などが問題になっていますが、大きな弁護士法人には経理部があり、弁護士個人の独断で私的流用できないようになっているかもしれないので、横領などの被害を避けるためには、大手弁護士法人を選ぶのは有効だと思います。

 ただ、私なら、大規模弁護士法人を選ぶことはしないでしょう。誰が担当者になるか分からないこともありますし、担当弁護士が退職した場合、引継ぎが生じ、事件処理が遅滞する可能性があります。弁護士との距離が遠く、弁護士と個人的信頼関係を築いて進めていくのに不向きなこともあります。

 

懲戒歴のある弁護士は避けろ!

 弁護士に対する懲戒の中には、依頼者のために、なんとか良い結果にしようとして、やりすぎてしまったケースもあります。弁護士は、紛争を扱うので、常に、上品に仕事をするわけにはいかないのです。また、過去に1回のケアレスミスで懲戒されたことがあるからといって、すべてにおいて悪い弁護士ということではありません。いまは反省して、二度とミスをしないように仕事をしているかもしれません。しかし、1回も懲戒されたことがない弁護士も大勢いるのですから、わざわざ懲戒されたことのある弁護士を選ぶことはありません。素人が選ぶときは、懲戒歴のない弁護士の方が良いでしょう。

 私なら、懲戒の内容を見ます。戒告程度で、懲戒の中身が自分にもあり得るようなミスなら避けたりはしないでしょうね。はっきり言って、弁護士1年目からノーミスの弁護士なんかいないので、懲戒されるかどうかは運に左右される部分もあるのです。

 

テレビに出ている弁護士を選べ!

 もちろん、テレビに出ているからといって、優秀な弁護士とは限りません。それどころか、ほとんどタレント化してしまい、弁護士業をやっていないというのでは、実力は錆びついていることもあるでしょう。また、テレビに出ている弁護士は、あくまで事務所の顔に過ぎず、実際に事件処理をするのは、他の弁護士ということもあります。

 しかし、テレビに出ているということは、いい加減な事件処理をするとニュースになってしまい、テレビの仕事も失うかもしれないということです。

 私なら、テレビに出ているという理由では選びません。どういうスタンスで出ているのかにもよりますが、テレビ出演と弁護士の実力は関係ありませんし、弁護士業以外が忙しそうで頼みづらいですね。

 

大々的に広告をしている弁護士を選べ!

 大々的に広告をしている弁護士は、同業者の間では否定的にみられることがあります。それは、広告により集客できるのは、弁護士に依頼した経験のない一見客であり、そういった人の無知に乗じて、いい加減な事件処理をする弁護士がいるからです。また、弁護士業というのは、丁寧にやっていれば、テレビでCMを流せるほど儲かるということはないので、テレビCMを流せるのは、大量の事件を受けて、手を抜いて処理している可能性があるのです。

 しかし、広告を流せるということは、その広告費を回収できているということなので、多くの人に選ばれているということです。その多くの人たちが、全員、見る目のない愚か者ということはないでしょう。多くの人が選ぶ弁護士は、良い弁護士の可能性が高いと言わざるを得ません。

 私の場合、大々的に広告をしている弁護士は選びません。そういう事務所がダメというわけではありませんが、事件処理の大部分を事務員が担当している可能性もありますし、そうでなくても、多額のCM費用を稼ぐために、事件数が多すぎて、細かい対応が不得意な可能性があります。

 

都会の弁護士を選べ!

 弁護士が開業場所を選ぶ場合、その理由は様々です。単に地元だからという場合もありますし、司法修習生の時に、縁もゆかりもない土地に配属されて、そのまま定着するというケースもあります。したがって、田舎の弁護士が都会の弁護士より劣っているというのは間違いです。しかし、確率の話をすれば、都会の方が弁護士間の競争が激しく、そのなかで生き残っているということは、それなりの実力がある確率が高いと思います。実力のある弁護士を引き当てるためには、できるだけ都会の弁護士を選ぶのも、一つの方法だと思います。

 私なら、都会か田舎かということよりも、自宅との距離を考えます。距離が近い方が、打ち合わせなどで便利です。別に、田舎の弁護士の実力が劣っているとも思いません。

 

 「なんだよ。人に勧めておいて、結局、自分はその基準で選ばないのかよ。」と思われるかもしれません(笑)。しかし、それは当然です。私は、弁護士なので、自分で選ぶ目を持っているからです。

 弁護士選びの基準というと、アレはダメ、コレはダメ、ソレはアテにならないという話を延々と述べた挙句、最終的には、フィーリングだとか、人柄だとか、事務所の雰囲気だとか、そんな曖昧な話になりがちで、役に立たないことが多いので、いっそ一般の方の目線を肯定的に評価してみました。

 ホントは、人を見抜く自信のある人は、複数の弁護士に相談して、信用できそうな相性の良い人を選ぶのがオススメです。