著名人の犯罪に関する実名報道について思ったこと

 TOKIO山口達也氏が書類送検された件で、弁護士のなかには、実名報道を疑問視する人もいます。もともと弁護士というのは、実名報道に否定的な人が多いのですが、これは刑事訴訟に無罪推定の原則があるからでしょう。今回の場合、示談が成立しており、不起訴になれば、刑罰を受けないのに、世間に知らしめて社会的制裁を科すのはやりすぎだという考え方もあるのだと思います。

 しかし、私は、いわゆるタレントの場合、一般人以上に、実名報道は仕方ないと思っています。なぜなら、彼らが売っているのはイメージであり、それこそが商品だからです。もちろん、いまや、タレントのみならず、あらゆる職業がイメージを大切にしています。しかし、タレントというのは、イメージそのものが商品という点で、他の職業とは一線を画しています。そして、我々には、商品の価値を適正に評価する権利があると思います。
 強制わいせつの事実は、たとえ示談により不起訴になったとしても、彼の人格に対する評価を下げる事実です。その事実を伏せたまま形成されるイメージに、皆がお金を出し続けることが正義とは思えません。だからといって、事件を明らかにしないまま、ひっそり引退することは、あれだけメディアに露出していては、事実上不可能のはずです。彼は、自分が世間に売ってきたイメージに反する行為をしました。社会的に広く買われてきた商品の売主が背信を犯したのだから、報道されるのは仕方ないでしょう。

 ちなみに、最近、作者が児童ポルノ禁止法違反に問われたことにより、休載が続いていた「るろうに剣心」が、連載を再開するという報道に接しました。彼の商品は漫画であり、彼自身のイメージではありません。やったことに対する制裁は当然ですが、仕事を続けるのは問題ないと思います。では、果たして、著名な漫画の作者だからといって、実名報道する必要があったでしょうか。捜査機関は、捜査の過程で、他にも複数の児童ポルノの買主を把握していたはずですが、その後、著名人以外で検挙された報道はなされたのでしょうか。著名人でニュースバリューがあるからといって、一般人であれば報道されないような犯罪を実名で報道するのは不公平にも思えます。
 しかし、漫画家にしてみても、人によっては、漫画家であるという理由で、子供絡みのイベントにお呼びがかかることもあるでしょうから、事実を世間に知らせる意義がないとは言えないかもしれません。

 

 なお、報道加熱による被害者側のプライバシー侵害は別問題としてありますが、それは犯罪報道を差し控える理由にはならないでしょう。