あくまで法律のはなし

なぜか福岡で働くことになった弁護士が、なぜか福岡で独立しなければならなくなったブログ

平成30年度短答式試験を解いてみた所感

 Twitterで、今年の短答式試験を解いてみたとtweetしてる実務家の人がいたので、私も触発されて解いてみました。

憲法:40点→実務で全然使わないが、常識で解ける問題が多い。

民法:56点→細かい知識を忘れていて苦戦。ちょっとショック。

刑法:46点→知識がなくても解ける論理パズルのような問題だった。

合計:142点(538位)

 さて、現役受験生ではないことを考慮すれば、それなりに解けた方だと思いますが、実務で一番使っているはずの民法の得点率が悪い(順位も一番低い)ことに、ちょっとショックを受けております。

 ちなみに私が合格した時の短答式の成績は、こんな感じ。

公法系:78点

民事系:130点

刑事系:81点

合計点:289点

 

 さて、実際に択一試験を解いてみた感想なのですが、私が合格ラインを設定するとすれば120点です。実際の合格点は108点以上ということで、3669人が合格していますが、120点だと2643人しか合格できない計算になります。

 合格ラインを120点とした理由は、各科目次の通りです。

憲法:33点以上。私は、司法試験を受けてから、もうずいぶん経っています。実務で憲法の知識を使うことも、ほとんどありません。しかし、今年の憲法の問題を見る限り、常識で解答を導ける問題が多いと思います。現役の受験生であれば、知識面もしっかり勉強して試験に臨んでいるはずですから、せめて33点は取ってほしいわけです。それでも私より相当低いのですから。

民法:51点以上。民法は、実務に出ても頻繁に使用する法律です。刑事弁護をしない弁護士はいるかもしれませんが、民法を使わない弁護士はいません。基本中の基本ということです。現役の受験生であれば、得点率68%の51点は取ってほしいと思いました。

刑法:36点以上。はっきり言いますが、知識がなくても、実務家に必要不可欠な論理的思考力があれば、40点以上は固い問題だと思います。現役受験生なら、それに加えて、知識面もしっかり勉強しているはずですから、45点以上取ってほしいところです。しかし、40点以上を求めると、他科目との整合が取れなくなりますので、合格ラインを36点としました。

  私も、新司法試験組で、上の期から、合格しやすくなってレベルが下がったと見られている世代ですから、あまり現役受験生を悪く言いたくはないのですが、実務家の方は、実際に解いてみてください。私の設定した合格ラインが、ある程度、妥当であると思われるでしょう。しかも、我々の世代は、行政法会社法、民訴、刑訴の知識が択一で問われました。それを考えると、今の受験生は知識面のレベルが低下していると断言してよいと思います。

 受験生のレベルを測るために、個人的に注目したのは刑法でした。3科目のなかで、一番簡単で、知識がなくても、論理的思考力があれば解ける問題が多く、実際40点以上取っている受験生が1900人もいます。逆に言えば、この問題で36点未満は、あまりにも基礎的な思考力を欠いています。36点以上の人数は3000人程度なので、私の設定した合格ラインが、ある程度的を射ていることがお分かりいただけるのではないでしょうか。

 

 一部には、司法試験合格者を2000人以上に戻すことを求める声もありますが、今回、短答式試験を自分で解いてみて、明確に反対意見となりました。私の設定したラインを超えたのは2643人で、この中で、実務に必要な起案能力を示せる者(つまり、論文で合格ラインを取れる者)が2000人もいるとは思えないからです。

 ただし、私は、司法試験の易化が良い方向に作用する可能性もあると思っています。なぜなら、司法試験が簡単になった分、法律以外の様々な能力を身に着けて、実務に出てくる可能性もあるからです。しかし、すでに合格ラインは、かなり下がっているのであって、更に下げるべきではないと思います。1500人未満にすべきかどうかについては、すぐに答えが出せませんが、少なくとも、2000人以上に戻すべきではありません。