あくまで法律のはなし

なぜか福岡で働くことになった弁護士が、なぜか福岡で独立しなければならなくなったブログ

人工知能に関する記事の読み方

 以前、「AIに仕事を奪われる心配をしている弁護士はいない」という記事を書きました。あれから、しばらくAIの記事を見かけないなと思っていたら、「人工知能革命で学歴社会は崩壊する」という記事を発見しました。

blogos.com


 この記事は、論理的思考力と知識習得力だけの高学歴人材は、人工知能革命で淘汰されてしまうと言います。そして、「職業的能力」「対人的能力」「組織的能力」を総合した「人間力」を磨くべきだと主張します。例によって、弁護士や税理士などの士業の仕事は、10年以内に半分が人工知能に置き換わるとも言っていますね(笑)。

 私は、人工知能の専門家ではありませんし、詳しく調べたわけでもありませんが、「人工知能が仕事を奪う論」には違和感を持っています。以前に書いた記事と重複になりますが、なぜ人工知能に関する記事が真面目に取り合うに値しないのか、まとめておきます。

1具体的な実用化事例が見当たらないこと

 どんな技術でもそうですが、まずは簡単なことから実用化していき、いずれ社会のスタンダードになっていくものでしょう。

 しかし、現時点で、人工知能が実用化されている具体例が見当たりません。

 報道で見かけるのは、すべて実験段階か、新しい物好きしか買わない玩具のような商品で、実用化には程遠い状況です。

人工知能関連記事が多すぎること

 ウェブでも雑誌でも人工知能に関する記事が多すぎます。

 最先端技術である人工知能の専門家が、世の中にどれだけいるのでしょうか。

 人工知能の専門家でなくても、きちんと人工知能を取材した記者が、どれだけいるでしょうか。

 「人工知能に触れておけば読まれる」という打算で記事が量産されているのは明らかでしょう。

人工知能とIT化を区別して説明する記事が少ないこと

 「Googleに聞けば知識が得られる時代に詰め込み教育は無意味だ」とか、随分前から言われてきました。その結果、学歴社会は崩壊したのでしょうか?

 人工知能革命は、かつてのIT革命や機械化・自動化とどう違うのか、それがきちんと説明されている記事は滅多にありません。

4なぜか医療分野に言及する記事が少ないこと

 人工知能の活用が研究されている分野は多数ありますが、それなりに成果を上げているのは、医療分野です。たしかに、レントゲンやMRIを読み取る技術は、生身の人間に頼るより、人工知能の方が得意かもしれません。しかも、医療は自然科学分野なので人工知能に置き換えるハードルも低いでしょう。

 しかし、冒頭の記事では、士業の仕事の半分が10年で人工知能に置き換わると言っています。士業の仕事を人工知能に任せる研究は、契約書レビュー等で試みられていますが、結局、どの仕事も、対人折衝が必要になることに加えて、刻々と変わる法規制に対応していく仕事ですから、人工知能に置き換えるハードルも高くなります。

 まだ実用化に至っていない人工知能に関する記事を真面目に書くなら、まず医療分野に言及するべきではないでしょうか。

5これからの時代に求められる人物像が薄っぺらいこと

 知識や思考は人工知能が代替して、コミュニケーション能力や職業的経験値や組織マネジメント能力が必要になると言いますが、職業的経験値をマニュアル化したり継承したりするには一定の知性は必要です。コミュニケーションや組織マネジメントにおいても、知的水準の高い人は、知的水準の低い人とコミュニケーションを取るのにストレスを感じますし、仕事上の仲間にも選びたがりません。まして上に立って欲しいとは絶対に思わないでしょう。結局、知識習得力と論理的思考力がない人が、「人間力」があると見做される社会は想定しづらいのです。

 

 私の考えは、以上なのですが、やはり一番は、IT革命のときに「Googleに聞けば知識が得られる時代に学歴は要らない」とか言われてたことが大きいですね。実際そうなってないですから。