あくまで法律のはなし

なぜか福岡で働くことになった弁護士が、なぜか福岡で独立しなければならなくなったブログ

「自分も弁護士に相談している」とアピールする人

個人間のトラブルで、私が一方から依頼を受けて、相手と交渉をしたり、訴訟をしたりするとき、相手が弁護士をつけずに、自分で頑張ることがあります。

その時、相手が「自分も弁護に相談しながら進めています。」と発言(アピール?)する現象を頻繁に見ます。

これは、私だけではなく、多くの弁護士が経験したことのある現象だと思いますし、本当に頻出する発言なんですが、弁護士側からすると「だからなんなのか。」「ああ、そうですか。」としか思えません。

もしかすると、交渉を有利にしようとして言っているのかもしれませんが、基本的に、この発言は百害あって一利なしだと思います。

 

まず、そもそも、弁護士は、「自分も弁護士に相談しています。」という相手の発言を信用していません。なぜなら、正式に着手金を支払って依頼するわけでもないのに、何度も同じ相談に乗ってくれる弁護士というのは、あまりいないからです。これは、単に、お金にならないからというだけではなく、自分が直接代理人として関与していない事件について、正確なアドバイスをし続けるのは難しく、仮に正確なアドバイスをしたとしても、本人がアドバイス通りに行動してくれるとは限らないからです。普通は、同じ内容について2~3回の相談を受けた時点で、依頼を勧めますし、それでも依頼しないなら、次の相談は受け付けないことが多いでしょう。

したがって、「自分も弁護士に相談しています。」と言ったとき、相手の弁護士が「ああ、そうなんですね。」と疑う素振りを見せなかったとしても、心の中では、疑うどころか、嘘だと確信している場合がほとんどなのです。

実際、相手が弁護士に相談していると仰るので、「その弁護士さんからは、…の点について、どうアドバイスされてるんですか?」と聞いてみたことがありますが、「…さんの思った通りにやれば良いと言われてます。」という回答で、ずっこけたことがあります。思った通りにやれば良いって、どんな弁護士だよ(笑)

なぜ、このような嘘をつくのか不思議なのですが、おそらく、自分も丸腰ではないということをアピールして牽制しているか、架空の専門家を背後に想像することで、弁護士と直接対峙する緊張を和らげようとしているのではないでしょうか。

いずれにしても、そのような発言は、全く弁護士に対する牽制にはなっておらず、かえって弱気な姿勢に見えますから、交渉や訴訟においては不利に働いてしまうでしょう。

 

もっとも、相手が実際に弁護士に相談しているのかどうか、確認する術はありませんから、もしかすると、私が勘違いしているだけで、嘘ではないこともあるのかもしれませんね。

しかし、仮に、嘘ではなかったとしても、不利な発言であることに変わりはないのです。なぜなら、弁護士に相談しているのに、依頼はしないというのは、その弁護士が依頼を受けてくれないか、依頼するお金がないということだからです。

弁護士が依頼を受けてくれない場合というのは、完全に負け筋の事件で、弁護士に依頼しても仕方がない場合です。つまり、弁護士に相談しているのに、いつまで経っても弁護士が出てこないのは、「私に勝ち目はありません。」と宣言しているようなものなのです。

そして、お金がなくて弁護士に依頼できない場合、交渉において不利になるのは当然です。ほとんどの個人間トラブルでは、金銭的解決を図ろうとするものですし、訴訟が長引けば交通費もかかります。「自分には金がないです」とわざわざ宣言するのは、早期に妥協せざるを得ない立場であることを自白するも同然なのです。

 

したがって、弁護士をつけず、自分で相手の弁護士と交渉したり、訴訟対応しようとするなら、「自分も弁護士に相談しています。」などとアピールするのは止めた方が良いのです。