国選弁護の報酬を踏み倒す被告人

 二年ほど前の産経新聞記事から引用です。

刑事裁判で有罪判決を受けた被告人が、裁判にかかった訴訟費用の支払いを免れ、結果的に徴収不能となるケースが過去5年間で約5900件、総額約5億3100万円に上っていることが16日、分かった。全体の件数との比較では、およそ6人に1人が事実上、支払いを踏み倒している計算になる。いずれも国が代わって負担しており、徴収率を高める方策が求められそうだ。(2016年5月17日産経新聞

  国選弁護の報酬は、「国選」の名の通り、国が負担するのが原則です。

 そもそも、国選弁護人という制度自体、資力のなくて弁護士に依頼できない人のための制度ですから、考え方としては、本人に負担させないのが「原則」と言っても過言ではないでしょう。

 しかし、裁判所が資力があると判断した場合、国選の報酬を被告人本人に負担させることができます。そして、その徴収事務にあたるのが検察庁です。

 上の記事は、その訴訟費用負担の踏み倒しが非常に多いというものです。

 5年で5億円、国民の税金です。

 もちろん、なかには、払えない人もいるでしょう。裁判所が資力ありと判断したとしても、罪を犯す人というのは収入が低い人が多いですから。

 しかし、残念ながら、故意に踏み倒している人が多数いるのは間違いありません。

 執行猶予判決を得た被告人の中には、ほとんど無罪放免のような感覚でいる人もいます。「刑務所に行くのは嫌、罰金もお金を取られるから嫌、執行猶予なら実害なし!」という感覚です。

 ところが、執行猶予判決を得ると、当然、すぐに社会復帰でき、職に就くこともできるので、訴訟費用の負担を求められる確率が高くなります。

 つまり、執行猶予になって良かった良かったと思っていたら、ある日、検察庁から訴訟費用を払えという請求書が届き、その段になって、はじめて精神的ダメージを受ける人もいるということです。

 なかには「こんなもん誰が払うか!」という考えの人もいるはずです。

 実際、私も、執行猶予で終わった事件の被告人から、「訴訟費用払いたくないんですけど」と言われたことがあります。その時は、もう弁護人じゃないし、こっちは国から報酬を受領済みなので、「検察庁に相談してください」とだけ言っておきました。(しかし、自分は国から報酬を受領済みだとしても、自分に対する報酬を堂々と「払いたくない」と言ってこられると、さすがにカチンときます。)

 請求される金額は、弁護士の活動内容にもよりますが、だいたい8万~25万くらいが多いでしょう。なぜ、差が出るかというと、起訴前の接見回数によって報酬が変わってくるので、余罪で再逮捕されたりして起訴前弁護の期間が長くなると、報酬も増えるのです。逆に、在宅事件で、起訴前に弁護人がついていないと、起訴後の公判弁護だけですから、8万くらいに収まります。

 もちろん、何回も再逮捕を繰り返され、長期間勾留されていると、もっと国選報酬は高くなりますが、当然のことながら、何度も何度も再逮捕するような事件であれば、実刑になる割合も多いので、被告人に費用を負担させるということも少ないでしょう(刑務所に行く人には、訴訟費用は負担させられませんから)。

 

 弁護士は、国選弁護人である間は、刑事被告人の人権擁護のために全力を尽くしますが、執行猶予判決を取ったら、訴訟費用については「耳そろえて国に払え」としか思っていません。上記の産経の記事では、「訴訟費用は払わなくてOK。被告人にはそう伝えている。」という匿名弁護士のコメントがありますが、こんなこと言う弁護士は、少数派だと思います。

 本来、検察庁には、徹底的に徴収してほしいところですが、残念ながら、強制的執行しようにも、国選弁護報酬は数万円から十数万円という少額であることが多いので、費用倒れに終わることが多いようです。

 回収しない方が安くつくなら、踏み倒されても黙っているのが合理的ということになってしまいます。国民の血税を預かる立場としては、正義に反しても、費用倒れの徴収に力を入れるわけにはいかないでしょう。

 

 そこで、強制執行が費用倒れにならないように国選の報酬を増やすというのはどうでしょう??

 えっ、本末転倒ですか(^_^;)

 弁護士は、みんな、増やしてほしいんですよ、国選報酬。安いので。。。